iPhone,Flash,Androidのパワーバランスに変化か

久しぶりにFlash使いも読んでて楽しめる、梅田もっちー的な煽りまくりエントリ。


先月まで、僕はiPhoneへのFlashPの搭載は100%ありえないと言い切っていた。しかし昨日、突然にモバイル・プラットフォームのパワーバランスに大きな変化がでそうなニュースが入った。

それは、次のiPhone SDK2.2SDK2.1のsafariから、ウェブアプリがローカル保存できるようになったらしいというもの。一見、たいしたことのないニュースだけど、多分これはモバイルのパワーバランスに大きな変化をもたらすことになる。


<追記>
iPhone 3G Wiki blog様に、ローカルキャッシュは2.1の段階で実装されてるとの指摘をいただきました。これは僕がローカルキャッシュのエントリの時期的にSDK2.2と間違えたミスです。一方でこのミスは本文の論旨そのものには影響しません。ローカルHTMLは依然としてAppStoreのモデルと競合しますし、それはSDK2.1の発表時にこの機能をフィーチャーしていなかったことからもわかります。


■なぜFlashはiPhoneに搭載されないのか。

まずSafariの仕様変更が何をもたらすかの前に、なぜFlashが搭載されないかをおさらいしよう。

その理由を一言でいえば、Flashの搭載はAppleのビジネスモデルを破壊するからだ。

Apple・iTMSの基本戦略はコンテンツ配布の権利をAppleが独占することが前提条件となっている。かりにiPhoneの上にFlashレイヤーが敷かれ、AdobeがFlashによるAppStoreを開始した場合、Appleのビジネスモデルは容易く崩壊してしまう。ゆえに今まで、何があってもiPhoneはFlashを搭載することができなかった。しないのではなく、できなかったのだ。


■何故かわるのか?

WEBアプリケーションのローカル化の採用には、おそらく以下の3つの理由があるが、おそらくAppleとしては苦渋の決断だっただろう。

・全てのアプリを囲い込まなくても、iTMSで十分な収益が得られる見通しが立った。
・アプリケーションの登録システムは、もはやパンクして機能していない。
・AppleはiTMSを通じての、広告モデル無料アプリを望んでいない。

iTunesを機能不全にさせない為にとられた今回の措置であるが、WEBを通じたアプリケーションの配布によって、全てのアプリケーションをコントロールするという基本前提が崩壊した。これ自体は、iPhoneがFlashを採用する直接な理由にはならない。だが、以下の理由からおそらく最終的にAppleはFlashを導入せざるを得なくなるだろう。


■ローカルキャッシュのもたらすもの

Webアプリのローカル使用は、全てのWEB開発者が、iPhoneとAndroid両方のアプリケーションを作る手段を得たということだ。

これは事実上のWidgetプラットフォーム戦争の勝者が、HTML5とWebKitになったことを意味する。今後のモバイルアプリケーションのスタンダードの一角としてHTML5, WebKit, JavaScriptが台頭していくことは間違いないだろう。以後のモバイルの多くはWebKitを導入せざるを得なくなるだろし、これ以後事実上iPhoneの解像度とブラウザの機能を参考に、後発の携帯電話は開発せざるを得ないということでもある。


■モバイルFlashの復権

こうなるとFlashPlayerはモバイルのプラットフォーム構想のパワーバランスに大きく関わってくる。

これには2つの理由がある。まず、HTML5ベースのアプリケーションはリッチメディアの取り扱いに難がある。そしてその問題をクロスプラットフォームで解決できる手段は、現在事実上FlashPlayerしかないからである。

Flashはそのコンセプト上、プラットフォームが多様化し、泥縄化すればするほど有利になるという特性を持っている。プラットフォームが分散すればするほど、全ての差異を吸収するラッパーとしてのFlashPlayerの価値は相対的に上昇する。

そしてWEBモバイルアプリケーションが、あらゆるモバイルで当たり前になったとき、iPhoneはFlashPlayerを拒否できるだろうか?? おそらくできない、iPhoneがFlashを突っぱねられていたのは、それがマルチタッチの次世代モバイルがiPhoneの独占市場だったからだ。独占の段階をすぎれば、Flashを搭載しないiPhoneは他のAndroidやWindowMobile端末に対する競争力を大きくそがれる。


■今後の展開

このようなことを踏まえると、短期的な戦略としてはAdobeはiPhoneを無視してでも、AndroidのFlashPlayerに注力すべきだし、事実その方向に動くだろう。また急務となるのはAdobe手動によるアプリケーション配信、課金モデルだ。

もしAppleとの単独交渉しか選択肢がない場合、AdobeはどうあがいてもFlashのローカルファイルのアクセス不可と、Adobe AppStoreを作らないということを受け入れなければならなかったと思う。しかしAndroid市場ではAdobeとGoogleは直接的に完全競合するわけではない。AdobeがAppStoreを作ることは、Googleにとってはそれほど危険なことではない。 もっともAdobe AppStoreは、AppleやMicrosoft、Docomo等にとっては核爆弾級の危険カードなので、軽々しくきれば反Adobe連合のきっかけになってしまう大技なわけだけど。

その一方でAdobeも受け入れなければならない2つの壁がある。1つはこの方向に進む場合、AIRを基幹とした戦略にかなりの見直しを迫られること。もう1つはMSとの政治的闘争でActionScriptをECMA標準の座から引きずり落とされたことだ。Widget製作のスタンダードがHTML5とJavaScriptに傾いたこのタイミングで、ActionScriptがECMAとは分化してしまったことは痛い。開発者の囲い込みに障壁ができてしまった。

個人的にはFlashはAS3を捨てて、ECMA3.1準拠の新言語を作るべきだと思ってるが、さすがにこれはリスクもコストも高い。ECMAに準拠しなおすのも、独自路線を貫くのもどちらも読めないバクチだろう。


そんなこんなで、今回の控えめな仕様変更は、おそらく予想以上大きな波を作り出す。一番わりを食うのは、日本の従来からある携帯アプリ市場、携帯サイト市場だ。僕は正直終了だと思うけど、日本はガラパゴスじゃないよ派というのはそれなりにいるので、今後数年は攻防が繰り広げられるのではないだろうか。

なんにしろ、Flash使いはこの波をうまくつかめれば、いっきにモバイル市場を席巻できる。まだまだ状況は二転三転しそうだが、久しぶりの大波乱だ。僕達Flash使いにとってもスマート・モバイル上のFlashコンテンツは次に移住すべき最重要の土地になるだろうし、そこへにいたる為の変化と技術投資に備えなければならない。

テ ン シ ョ ン 上 が っ て き た ぜ。

コメント / トラックバック 10 件

  1. haro より:

    >WEBアプリケーションのローカル化の採用には、
    >おそらく以下の3つの理由があるが、おそらく
    >Appleとしては苦渋の決断だっただろう。

    なんとまぁ見当違いな(笑)

    WebKitがHTML5を実装する過程で、ローカルDB
    の実装によるオフラインのウェブアプリ対応は、既に
    サポートされていました。無知もほどほどに

    今回の件は、単にiPhoneに搭載されているWebKitが
    アップデートされて、よりHTML5に準拠したものになった。
    ということです。

  2. admin より:

    >haroさん
    えーと、ローカルDBは、SDK1.1の段階で既にサポートされています。

    ここで論じているのは、HTMLコンテンツそのものをローカルにキャッシュできる機構をなぜ「今」採用したかです。

    AppStoreが完全に機能しコンテンツが囲いこまれている状態ならば、このタイミングでAppleが収益を減らしてまでHTML5への準拠を推し進める理由はないと思いますが。

  3. haro より:

    ウェブアプリとネイティブアプリは分けて考えましょう。
    そもそも初期のiPhoneOSは、ネイティブアプリの開発をサポートしていませんでした。
    その時に推奨していたのがウェブアプリです。ネイティブアプリとApp Storeが導入
    されたのは、ユーザーや開発者の間でそういう要望が大きく、そこが閉じていることを
    批判する声に対応したというのも一つの理由です。

    そしてAppleは、WebKitの開発やHTML5への準拠は、以前から積極的であって、
    HTML5を推進する立場でもあります。ウェブアプリへの対応は今後のIT業界では
    避けて通れない、必須事項だと考えられていることを反映したものだと考えます。

    >Mozilla、Opera、Apple が、『HTML 5』の採択を W3C に提言
    http://japan.internet.com/webtech/20070417/11

  4. haro より:

    ・AppStore でネイティブアプリの世界共通のインフラを構築
    ・MobileMeでクラウドコンピューティング化への対応
    ・Safariによるウェブアプリ(+ホーム画面でのアイコン化サポート)

    これらは競合していません。
    むしろ、どれもインターネット端末として必須の要素です。

  5. admin より:

    >haroさん

    haroさんの1つ1つの論旨は納得できるものもあるのですが、AppStore, クラウドコンピューティング, Safariのウェブアプリの3つを同時に展開する、戦略的な必然性が見えません。ちょっとiPhoneらしくないというか、流行りモノを詰め込んだだけという感じに見えてしまいます。

    Webkit/HTML5の流れは、iPhoneの為の布石というよりも、2005年から続くOS Xのウィジェットと、Yahooウィジェット、Flash AIR、Google Gearsの、スクリプトベースのスモールアプリ戦争の延長であり、FlashKillerとしての側面以上のものはないように思えます。

    haroさんのインターネットがHTML5の方向に進むという予想は正しいと思います。その一方で、Appleのビジネスモデルの重要な一角を担っているのは、iPod・iTunes・AppleTV・iPhoneと連綿と続いてきた、インターネットを経由しないプラットフォームによる抱き込み戦略です。

    この2つは明らかに矛盾します。そしてSafariベースのウェブアプリからお金を生み出すビジネスモデルをアップルは持っていません。むしろこの戦略はGoogleや、現状まったく食い込むことのできなかったMicroSoftに利します。

    この「今お金を生み出すモデル」が「次世代の一角を担うモデル」と矛盾していることのジレンマ。これが今Appleの抱えている最大の問題点だと思っています。

    そういう意味でも、Appleとしては今現在のHTML5への急激な舵取りは望んでいませんし、苦渋の決断だと考えているわけです。

    haroさんが、あげた3つの柱(個人的にはMobileMeはクラウドより、データストレージよりだと思いますが)は、次世代端末として必要な一方、3つめの要素は現行のAppleのiTunesを聖域化するモデルとは衝突するのではないでしょうか。

    この点に対してHTML5を今、AppStoreの独創状態のタイミングで採用することで、Appleにどのような利があると考えているのかを知りたいです。

    僕には、iPhoneのマルチタッチJavaScriptAPIや改造度を事実上のスタンダードに推し進めようという以上の戦略的な意味がないように思えます。そして、Androidが出るタイミングで同時に出しても遅くはないと思うのですが。

  6. 今日のニュース 10/08/2008 より:

    [...] fladdict» ブログアーカイブ » iPhone,Flash,Androidのパワーバランスに変化か [...]

  7. links for 2008-10-08 « 個人的な雑記 より:

    [...] fladdict» ブログアーカイブ » iPhone,Flash,Androidのパワーバランスに変化か (tags: android iphone flash) [...]

  8. daoki2 より:

    fladdictさん、こんにちは。いつも興味深く拝見させていただいてます。

    AppleがHTML5を押し進めるのは、ご自身も言明されておられるようにFlashの対抗軸としての意味合い以上のものはないような気がします。

    また、HTML5によってWEBアプリがローカルから起動できたとしても、ネイティブアプリ&AppStoreのモデルを当面脅かす可能性は低いように思います。

    なぜなら、
    ・HTML5とネイティブではまだまだ出来ることの差異が大きいこと
    ・HTML5ベースのアプリの開発生産性はまだ低いと思われること

    なので、Webkitがローカルキャッシュをサポートしたとしても、我も我もWEBアプリで、というような状況にはならないような気がします。

    であれば、それでもネイティブアプリを開発してくれない層に対して、Flashに流れられるよりは、HTML5アプリに開発者を引き込むことはAppleに利があるような気がしますが、いかがでしょうか?

  9. DDIポケットの研究。 より:

    HTML5+JavaScriptで大した事ができないのなら、
    アップルにとって問題はないのではないでしょうか?

    FLASHを認めてしまうと
    iPhoneがネットワークに与える負荷をアップルがコントロールしづらくなります。

    無線はネットワーク資源が限られています。
    過度のネットワーク負荷を与える高コストな端末は
    販売価格やネットワーク利用料金が高くなるので、
    それを好まない消費者も居るでしょう。

    WindowsMobileやAndroidと違って、制限された環境であることが
    アップルの強みだと思います。ネットワークの負荷が低く、
    利幅の大きい商品ならば、端末価格やネットワーク料金の値下げの余地がありますから。
    WindowsMobileやAndroidはその辺の制限が無いのが弱点です。

    HTML5+JavaScriptで問題になるほど、ネットワークの負荷の高い
    人気のでるアプリが書けてしまうと問題ですが。
    (この辺はどうなのでしょう?その辺の事情に疎いので)

    iPhone 3Gはモバイルやビジネスモデルをよく研究した、よくできた製品だと思います。
    Androidとかは個人的にはイマイチの評価です。

  10. 積ん読 または 買い物リスト IT部門 より:

    [Android][Flash] とうとうスマートフォンにLiteじゃないFlashPlayerが載りましたね!

    Adobe の プレスリリース に出てました。HTC製の「HTC Hero」という端末で、Android上でFlashが動くよ!って発表ですね。

      ※ 画像のとこクリックすると、デモの動画にリンクされます動画…

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