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iPhoneアプリ QuadCameraによる海外進出実験報告メモ

来週から本業が修羅場になって、iPhoneアプリどころじゃない。 とりあえず QuadCamera リリースから1ヶ月がたった中間報告をまとめる時間がないのでメモ。



観測気球としてのQuadCameraで、見極めたかったことは以下の通り。



  • iPhone市場におけるブルーオーシャン開拓のリスクとリワード
  • 競合のいない分野における、アプリケーションのDL数の推移
  • 海外における、バイラル発生の推移とハブの見極め
  • 海外におけるバイラルでのTwitterの位置づけ
  • 海外ランキングのスケールと維持ノウハウの見極め



バイラルのハブおよび、Twitterの影響力に関しては、紹介ブログ数やTwitter言及数と、DL数のマッピングデータを採取できた。 具体的にはGizmode, Engadet, Hotwired, EmilyChang, SwissMiss, AppleInsider, Cult of Mac, GeekSugar, 148apps等々と、世界のアルファブログの言及がDL数にどう影響するか、エントリーの連鎖がどう広がるかを観察できた。 TwitterにおいてもiPhone系の呟きの伝達経路をある程度観測できた。 ここら辺のデータは次回以降、より精度の高い検証を行いたい。あと有力サイトほど、プレスリリースあんまり役に立たないっぽい。


市場規模について
USカメラ・ランキングの1位は通常では、総合ランキングの100位圏内ギリギリであり、US全体においてはカメラは弱小市場である点が確認された。


ブルーオーシャン開拓について
今回の実験で最大の誤算は、QuadCameraリリースからたった10日程度で競合連射アプリがリリースされはじめ、最終的に1ヶ月で国内から4個、海外にて1個の連射カメラがリリースされたこと。これによりブルーオーシャンの観測が不可能となってしまった。

BullCamは同時期だからお互い運がなかったとして、残り3つが日本からリリースされたのは興味深い。 QuadCameraの日本でのDL数は世界における3%しかないことや、日本ではiPhone系ブログ以外ではほぼ扱われなかったことを考えると、これは純粋に国内において、自分の声がでかいことのデメリットと思われる。

価格帯もQuadCameraの230円に対し、他の全てのアプリが115円という低価格戦略をとったこと、海外の1個にいたっては350円、115円、0円という値下げ暴走を繰り返したことなどにより、リリース後1週間からQuadCameraの売り上げは、他アプリのリリース時期と連動して加速度的に落下。 最終的に全てのアプリが売り上げを食い合って、バイラルが利益に連動する間もなく全員ランキング急降下という結末に収束した。

残念ながらブルーオーシャンにける先行者利益の測定はできなかったものの、ブルーからレッドに移行する推移は観測できた。また同時期にリリースされた同種のアプリが、他者にどう影響を与えるかもある程度観測できた。

結論からいうならば、iPhone市場ではブルーオーシャンを開拓するメリットは少ないと思われる。 市場独占期間が極めて短い為、新規技術開発の投資コストを回収するのが難しい為だ。

現状の戦略としては、ヒットしたアプリがひと段落したタイミングで、同系統かつヒットアプリのサポートしていない機能をつけ、より安い価格にて販売するのが最適解の一つと思われる。 この戦略に対する防衛策としては、競合アプリのリリース時にダンピング戦争をしかけて、相手の初速を塗りつぶすことで対処が可能と思われる。が、QuadCameraにおいては、この戦略は採用していない。 ダンピング戦争による防衛は、技術投資の回収を難しくし、またその分野の市場そのものを破壊する可能性がある。 在庫と増産コストという概念がないiPhoneアプリにおいては、ダンピング戦争は事実上$0.00になるまで止まることがないからだ。 そのレベルでの殲滅戦は今回の実験の範疇外なので行っていない。

なお低価格戦略に対する防衛策としては、$1.99という価格帯は有効であると思われる。 この額に対する価格競争は$0.99の一択であり、それ以上の値下げができない為、$1.99のアプリが攻撃的ダンピングを行った場合、$0.99のアプリは応戦することができない。また$0.99のアプリケーションを$0.00に値下げする方法は、一見有効そうであるが合理的ではない。無料のアプリケーションを後で有料に切り替える戦略が合理的でないのは、SepiaCameraのDL数推移によって観測済み。 これは無料~有料の切り替えにともない、ランキングがリセットされ、有料化に戻る際にアプリの露出を完全に失う為である。


感想
細かいノウハウに関しては、どっか勉強会とかトークとかにて。 具体的な数字については出すことのメリットがないので、今回は非公開。 ただひとついえることは、無条件の情報公開は、戦略の多様性に対して有害だという点。 単に同じことをする人が増えて、レッドオーシャンの加速化と共倒れを招く印象があることがはっきりした。

情報は、ある程度価値観の共有や住み分け、共闘ができる人の範囲で限定的にシェアをするほうが、戦略としては有効な模様。 市場の住み分けさえ可能ならば、依然として情報の共有はメリットが高いと思われる。

次回以降の実験では、以下のことを見極める必要がありそう。


  • 共有するほうが益になる情報と、共有することがデメリットになる情報の切り分け。
  • 複数のアプリケーションが相互にDL数を伸ばすモデルの模索。
  • ランキングに露出しない(注目されない)順位をコントロールしながら、安定した位置を確保する方法。




そんな感じ。 とりあえずiPhoneAppStore市場の動向の結構な部分は見極められたと思う。 あとは世界でコンスタントにヒットするアプリを出せるかどうかで、仮説を検証していくことか。

個人的には、なんとか米国上位ランカーの情報を調べられれば、iPhoneアプリAppStoreについて知りたいことは大体調査完了だと思うのだけど、どうやって上位ランカーに食い込んでデータを採取するかが最大の問題。 これ以上ディープな観察は趣味の範疇じゃちょっと実験しきれない。