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コンテンツプラットホームとしてのiPhoneの設計が間違っている、を読んで

はてなポイント3万を使い切るまで死なない日記: コンテンツプラットホームとしてのiPhoneの設計が間違っている

僕もこの人の考えに近いかなぁ。

ぼくが問いたいのはiPhoneで、今後、大儲けできるようなシナリオが存在できるような設計になっているのかどうか、そしてアップルがそういうシナリオを用意するつもりがどれだけあるか、ということだ。


そもそもDL販売によるアプリケーション販売って構想そのものが、死亡遊戯だもの。Appleもコンテンツで儲かるとか思ってはないと思う。アプリケーションはデバイスを普及させる為の手段ではないかと。

いつも思うんだけど、なんでDL販売を考える場合、誰も在庫について真剣に考えないのだろうか。 DL販売のメリットが流通コストの削減にあるなら、最大のデメリットは在庫という概念の消失だと思う。 在庫という概念がなくなるのは、一見メリットと見えるけど、これは明らかなデメリットだと思う。

在庫という概念のなくなると
在庫がないという事は、無限に流通させることができるということだ。これは近視眼的に個々のプロダクトレベルで見た場合は、明らかにメリットだ。小型プレイヤーにとっては世界に勝負できる大きなチャンスに見える。

ところが全体を俯瞰した場合は逆になる。何故なら、商品が無限に複製再生産できる場合、過去にリリースされた全ての商品は、事実上の競合として半永久的に存続するからだ。

その上App Storeの構造上、iPhoneアプリの売り上げはストア上での露出に完全に依存し、初動をピークに急激に下降をする傾向がある。 露出さえなくなってしまえば、後の収入は無数の同種競合アプリ間で分散することとなる。 このような再生産コストと在庫リスクが0で、売り上げが価格とストア露出に依存する場合、ある戦略が浮上してくる。 

それは売り上げピークを超えてしまった名作アプリをダンピング販売することだ。

ダンピング戦略の合理性
例えば600円の超高機能な写真編集アプリがあったとする。 このアプリで売り上げのピークを超えた後も利益を出すもっとも合理的な戦略は何か? それは、そのアプリを競合の半値以下に値下げすることである。

どうせあとは下降していくだけならば、いっそ捨て値で、ライバルごと畑を焼いてしまえばいいのだ。

在庫を抱えるリスクも再生産のコストもかからないならば、それは非常に合理的だ。 なぜならば、まだ利益回収のできていない競合アプリは価格競争力に耐えられず、またこれから参入するライバルはその価格帯では開発をペイできなくなるからだ。 結果、極端にダンピングをしたアプリは、安定したシェアを手に入れることができる。 そして安定したシェアが手に入るのならば、この戦略は現状のiPhoneのスケールでは十分にペイしてしまうからだ。

倫理的な善悪や、感情的な好悪に関わらず、その戦略が有効戦略として機能する以上、それを採用するプレイヤーは必ず現れるだろうし、全体がその方向に進むことを止めることはできない。

結果、現状のシステムでは個々のプレイヤーが利益の最大化を目指せば、必然的に価格は破壊されていく。 そして市場に生き残るのは115円~230円で、超高機能アプリを作れるプレイヤーだけとなる。この仕組みのスマートなところは、開発者同士の争いが激化すれば激化するほど、ユーザーもAppleもハッピーになる点だと思う。ダンピングのリスクは開発者が負い、メリットは彼らに向くからだ。

アタリショックは起きない
AppStoreのシステムについては、アプリの乱立によるアタリショックが起きる為、これがAppleがダンピングや乱造を抑制する方向へと動かすと考える人もいるだろうが、恐らくそれは起きない。なぜならばストアにおけるアプリケーションの露出はAppleが完全にコントロール可能だからだ。

Appleは安く高機能なアプリを定期的にフィーチャーする。そして、その優秀な開発者さえ保護すればいい。それだけで、低価格競争戦争では乱造しかできないプレイヤーは、すぐに淘汰されてしまうからだ。 Appleがアプリケーションの露出をコントロールできる以上、アタリショックは起こりえない。

コンテンツより端末
僕には「コンテンツプラットホームとしてのiPhoneの設計が間違っている」かどうかの判断はまだ付かない。が、開発者にとって優しくない環境であるのは確かだ。

そしてAppleにはこの構造を是正することはないと思う、少なくとも直近では。 なぜならAndroidなりBlackBerryと対抗するにあたって、低価格帯の高機能アプリというのは武器だからだ。

身も蓋もないことを書くと、iPhone一台販売すればAppleには数万円の金額が転がり込んでくるはずだ。 1ユーザーの平均アプリ購入数が10個程度ならAppStoreによる収入なんて今は捨てても問題はない。iPhoneの普及が高プライオリティである以上、アプリの低価格化に歯止めをかける理由がAppleにはない。 <追記補足>これはAppleが別に開発者を軽視しているわけではないと思う。devやstoreの中の人の思惑とは別に、組織としてのAppleは自身の大きな戦略を犠牲にしてまで、ここを積極的に変更できないという感じなんじゃないかと思う。

この環境は当面続くんじゃないかなと思う。多分、スティーブ・ジョブズが病気療養中に丸くなったとか、復帰したスティーブ・ジョブズがいつのまにかスティーブ・バルマーと入れ替わってたとか、そういう根本の戦略に関わりそうな大変化がなければムリかと。

そんなこんなで

コンテンツの流通プラットフォームとして考えて場合、みんなが低リスクでハッピーという環境ではないと思う。 参入障壁は低い。でも、利益を出すには大コストで超低価格帯アプリを作って、周辺競合を殲滅しつつ一人がちする。 一握りの大勝者と、大多数の敗北っていうルールが現状のAppStore市場だと思う。

セカンドライフ的なバブルはもう終わったと思うし、利益を出せるプレイヤーはいると思うけど、その為にはこの殺伐ルールを受け入れて、これに特化した戦略を組み立てなければいけないのだと思う。個人的にはアリだと考えているけども。

とか書いているわけですが、僕もニートエンジンだったQuadCamera死亡により尻に火がついたので、ちょっと本気でAppStore市場を研究するか、そろそろflashの仕事をしなければならなくなってきた今日この頃です。