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デザイナがエンジニアリング(プログラム)を学ぶコツ

最近、色々な方と「表現とエンジニアリングの融合」について、お話を伺ったりしたことからのまとめ。

なぜ表現者はテクノロジーを学習するのが苦手か
表現とエンジニアリングができるハイブリッドな製作者は、理系あるいはエンジニア出身の人間が多い。逆にアーティストや(グラフィック)デザイナーのバックグラウンドから、ハイブリッド型へと移行する人は相対的に少ない。

基本的には、エンジニアのほうが「系統立てて学習する」という点で、ノウハウと教育がある。いわゆる「美的センス」といわれるようなモノであっても、いちどロジック化して自分なりに消化さえできてしまえば、エンジニアは表現やデザインもエンジニアリングの一貫として学習することができる。(逆に、スキルをブレイクダウンして学習するぶん、「作れるけど作りたいものがない」になりがちではある。)



明確なビジョンが学習を阻害する
一方アーティストやデザイナが、なぜテクノロジーを勉強しにくいかというと、それは彼らの職業がアウトプットベースだからである。表現者の場合、一番最初に「こういうモノを作りたい」というビジョンが先にくる。明解なゴールがあることは学習にとってよいことに思えるが、ここが足を引っ張る。

例えば「センサーで画像認識をして、プロジェクションマッピングをしたい」といったビジョンがあった場合、彼が学ばなければならない技術は、プログラミング、OPEN-GL、OpenCV、センサー、電子回路、シリアル通信、プロジェクションマッピングと膨大な量に膨れ上がる。学ぼうと思っても、「作りたいモノ」を作るには、年単位の学習(しかも抽象的なものを)が前提となってしまうのである。

つまりアウトプットをコントロールしたい人は、数ヶ月〜数年間アウトプットをおあずけのまま学習に専念しなければならない。ここが最大のハードルとなる。アーティストやデザイナは、今の手持ちのスキルセットで作りたいモノがそれなりに作れている。そのため、わざわざ苦行のような抽象学習に時間をさくモチベーションが低い。結果、テクノロジーの学習に積極的に投資するアーティストやデザイナーは少ないのだ。



ゴールを定めずに段階的に学習する

では、アーティストやデザイナはどうするべきか?というと、段階的な学習法を採用するのがよい。

最初に「◯◯が作りたい」というゴールを定めるのではなく、「学習した範囲内で、面白いものを作る」というアプローチだ。

  • 円の描画とループ文を学んだので、円と再帰だけでポスターを作る
  • if文を学んだので、条件分岐するサイネージを作る
  • センサーを学んだので、そのセンサーを使ったインスタを作る

といったように、「何かを学んだら、それをテーマに手持ちの技術だけで面白いものを作る」を繰り返す。

そうすると、技術を1つ憶えるごとに、技術と密結合した作品ポートフォリオができあがる。また「作りたいモノが作れない」というストレスを味わわなくて済む。学習が進んで行くにつれ、以前おぼえてAとBを組み合わせてみよう・・・といったことも可能となってくるし、その段階までいけば、次に「◯◯を学ぼう」というパスも自力で作れるようになる。



アーティストやデザイナーのような、最終ゴールドリブンの製作者にとって、「技術を弄くることそのもの」はモチベーションをもたらさない。学習においては、最終ビジョンを考えるのではなくブレイクダウンした課題(技術スキル)を段階的に与えること。つまり「この技術を使って、面白いものを作りなさい」という、制約ベースの創作と学習プロセスを導入する。こうすることで、学習効率は大幅に増加するし、同時に挫折率は大幅に減少できる。