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Googleはどうやってサービスを生み出すのか? – 2時間でサービスを生むデザインスプリント



<追記>オリジナルのデザインスプリント文献翻訳はじめました</追記>
THE GUILDのメンバーで、Google主催のプロトタイピングのワークショップ「デザインスプリント」に参加してくるなど。ご招待いただき多謝でございます。

デザインスプリントとは?
デザインスプリントはグーグルによるデザイン教育メソッドとそのワークショップ。数時間から数日で一気に籠って、商品のコンセプトデザインやプロトタピングを仕上げてしまう高速なデザイン手法です。Googleのベンチャー機関Google Venturesがよく、投資先に行っているものです。

導入事例としては、最近に日本にも上陸したブルーボトルコーヒーのサイトブランディングで行われたのが有名でしょうか。GoogleX内部でも頻繁に行われているようです。本来は5日間でやるこのデザインスプリント、今回は入門編ということで圧縮して2時間で1つの企画を考えます。本日のテーマはAndroid Wearアプリのプロト企画。



1: Understand / 理解する
スプリントは5個のフェーズにわかれます。まずは(顧客の)理解、そして(アイデアの)発散、決定、プロトタイプ、そして評価です。理解のフェーズでは配られた5種類のペルソナの中から、自分達が取り組む課題をみつけだします。

1-1: グループ分け
まずは4〜5人でグループ分け。デザイナーとエンジニアが適度にまざるように、同じ会社の人が同チームにならないように、各グループに配分していきます。今回はワークショップのためデザイナーとエンジニアのみですが、本来のデザインスプリントでは、会社のCEOや営業、プロデューサーなど様々な人を含めるようです。こうやって初期段階からデザインへのコミットとコンセンサスを作っていくとか。

1-2: ペルソナ選択/グループ作業
配布されたユーザーペルソナは5種類。自転車のプロ選手や、シェフ、ブロガーなどバラエティあふれる人選。このなかから1人を数分内にディスカッションして選びます。個人的にはシェフにチャレンジしてみたかったのだけど、最終的に僕らのグループが選んだのは、NPO法人でエンジニアをしているJEANさん。JEANさんのペルソナは以下の通り。

  • 33歳の旅行好きエンジニア(NPO勤務)
  • アフリカによく旅行する。
  • 月に1度はキャンプするほどアウトドア好き。
  • 次の旅は、ニュージーランドの農家にボランティアしにバックパッカーやる。



これらの情報をベースにまずは個人でJEANの重要視するバリューを考え、その後「グループでディスカッションしてJEANさんのコアバリューを決定しました。僕らの場合は、JEASNさんのコアバリューは「新しい旅」で、「新しい経験」のために「旅の情報」を求めている。と仮定した。このコアバリューの為のプロダクトをみんなで企画していくことになります。


2: 発散 / Diverage
さだまったユーザーペルソナに従って、アイデアを生み出していきます。このフェーズでは発散の名前の通り、既存のアイデアにとらわれずに、できるかぎり自由に大量のアイデアをだしていきます。

2-1: アイデア出し/個別作業
相談なしの個人作業で、大量のアイデアを出していきます。ポストイットを使い、1枚につき1つのアイデアをガンガンと書いていきます。この段階ではアイデアの実現性やウェアラブルとの相性は無視して、思いつく限り自由に書いていきます。この間およそ5分。

2-2: アイデアのマッピング/グループ作業
各自が作成したアイデアを総計10分ほどでいっきに発表しあいます。この間は否定的なことを言うのはNG。「YES and」と言われる、人のアイデアにさらに上乗せする発言が推奨されます。



発表しあったあとは、ホワイトボードに全てのポストイットを貼付けます。無秩序に貼るのではなくホワイトボードのXY軸にユーザーバリューと技術的難易度をマッピングしました。

ちなみに議題にあがった案をピックアップすると以下のような感じ。

  • サバンナでの動物の目撃情報を共有する。
  • 危険な場所に踏み込んだら通知する。
  • 名所のガイドを出す。
  • 旅行先の地域情報やレート、犯罪情報などを出す。
  • 自分の旅をストリーミングでキャスト。
  • Wifi搭載ドローンがユーザーを追随。




3: 意志決定 / Decide
各自意見がでそろったところで何を作るかの意思決定フェーズ。デザインにおいて最大の的は民主主義とことなかれの妥協です。デザインスプリントではドット投票という手法で、民主主義バイアスを軽減していました。

3-1: ドット投票/グループ作業
ドット投票はグループワークにてスピーディーに優先順位を決定する、変形民主主義のメソッドです。ドット投票そのものについては、長くなるためリンクを参照ください。

ざっくりいうと1人2票まで、シールをつかって投票できる変則多数決です。シールは2つの別個のアイデアにそれぞれ投票するも、1つのアイデアに2票つかってしまうのも自由です。今回の投票では「サファリにいるガイドや旅行者間で、動物の出現を通知/共有できる」というアプリになりました。



3-2: シナリオ洗い出し/個人作業
アプリにたいして、ユースケースを考えます。A4の紙を折って8等分し、このアプリが使われるシナリオを8通り色々と書込ます。でてきた案は以下のとおり。ここでは苦戦する人も多かったのですが、ユーザーの1日の行動やサファリツアー1周分のできごとを想定すると描きやすかったのではないかと思います。僕の中ででたユースケースは以下のような感じ(写真とりわすれましたワークショップの方々が廃棄寸前の紙束から発見して教えてくれました多謝!)。



  • サファリで誰かが動物を発見すると通知。
  • 危険なエリアに立ち入りそうになったら通知。
  • 動物のいるエリアまでナビゲーションしてくれる。
  • 動物をみつけたら報告する。
  • みつけた動物の習慣や特徴が調べる。
  • 周辺の動物を地図で俯瞰して、次の獲物をチェック。
  • 求愛の鳴き声などをならして、動物をおびき寄せたり追い払ったり。



3-3: シナリオ決定/グループワーク
それぞれが作成したシナリオを持ち寄って、一番素敵なシチュエーションを選び、その部分をプロトタイプ化します。僕らの場合は前回一致で、「動物を発見したときの通知」がコア体験と決まりました。



4: プロトタイピング/ Prototyping
何を作るか決まったところで、いよいよプロトタイピング。今回はスピード優先でペーパーでのプロトタイピングになります。まずは各自で作業し、その結果をつきあわせながら再び個人作業をする・・・というサイクルを繰り返します。

4-1: ペーパープロトタイピング/個人作業
会場にて配られた、画面遷移シートをベースにガリガリと描いていきます。ここももう5-10分の作業なのでいっきに詰めていきます。




4-2: ペーパープロトタイピング/グループ作業
各自のペーパープロトを持ち寄り、みんなのフィードバックを集約しつつ1枚のシートにまとめていきます。画面のレイアウトなども実際の遷移にあわせて整理をしていきます。この後の発表を意識して、ここでは視認性をあげるために自主的にマーカーによる濃淡をつけてみました。






5: Validate / 評価
このようなにして出来上がったものを、最終的なユーザーテストにかけます。ユーザーテストの結果をうけながら、スプリントを何度も回転させてどんどんと精度を高めていきます。今回はワークショップなのでこのフェーズは省略。1チーム1分のライトニングプレゼンとなりました。僕らのチームで発表を担当したP社の人が、えらいプレゼン上手だったのが印象的です。





おまけ: Invisionによる動作モック

ここからは番外編。解散後に気になるところを修正して、1-2時間でちょろっとPhotoshopとInvisionで動くプロトタイプにしたものがこちら。こんなこともあろうかと、事前にアフリカでライオンを撮影しておきました。



おわりに
というわけで、あっという間の高密度な2時間でした。本来ならばこの工程を5日間程度でやるのですが、今回はお試しワークショップというために全行程が2時間ほどに凝縮されています。弊社の内山くんも別途レポートを書いているので、こちらもどうぞ。

実際にやってみた感想としては、グーグルスタイルのスプリントは、以下のような部分がポイントのように思えます。プロトタイピングとしても強力ですが、そのまま社内にデザイン指向を布教できるところが重要ですね。

  • デザインプロセスにチーム全体を巻込める。
  • 初期の段階から、ユーザーやコアコンセプトに対するコンセンサスをとれる。
  • 初期段階から、複数のバックグラウンドの人間による多角的な分析を行える。

UX侍でGoogle Mapチームにインタビューしたときも感じましたが、グーグルは一般のイメージ以上にデザイナーに理解ある職場だと感じました。

またワークショップや勉強会があれば、行ってみたいと思います。